めまい治療の現場で極めて深刻な問題となっているのが、医療機関を転々とする「めまい難民」の存在です。脳外科でMRIを撮影しても「脳に異常はありません」、耳鼻科で聴力や眼振を調べても「内耳は綺麗です」と告げられ、最終的に「気のせい」「ストレス」という曖昧な言葉で片付けられてしまうケースが後を絶ちません。
SNSや大手Q&Aサイトでは、以下のような当事者の切実な告白が日常的に投稿されています。
「脳外科も耳鼻科も2軒ずつ回ったけれど、どこも『綺麗な状態』と言うだけ。でも自分はスーパーの陳列棚を見るだけで足元が崩れそうになり、外出が怖くてたまらない」(40代女性・Xへの投稿より)
「会社でPC作業を始めると30分で視界がゆらゆら揺れてくる。上司には仮病扱いされ、心療内科に回されて安定剤を出されたが、眠気が出るだけで根本的な解決になっていない」(30代男性・知恵袋での相談手記より)
こうした長期にわたる「説明のつかない浮動感」の多くに、2017年に世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)に正式定義された持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)が関与していることが明らかになってきました。過去の急性めまい(良性発作性頭位めまい症や前庭神経炎など)や激しいパニック発作をきっかけに、脳の姿勢制御ネットワークが過剰な警戒態勢を解除できなくなり、視覚刺激や姿勢の変化に対して脳が誤作動を起こし続ける病態です。
日本めまい平衡医学会に所属する専門医の報告でも、原因不明とされてきた慢性めまい患者の実に4人に1人がPPPDの診断基準を満たしていると報告されています。単なる精神論ではなく、神経回路の機能的異常として正当に評価される時代に入っているのです。