注意すべきは、鳴き声の背後に急性の疾患や慢性的な身体的苦痛が隠れているケースです。猫は本来、外敵から身を守るために痛みを隠す習性があります。その猫が普段と異なるトーンで鳴き続ける場合、すでに限界に近い苦痛を感じているシグナルとなります。
臨床獣医学において警戒される代表的な発声パターンと疑われる疾患は以下の通りです。
1. 排泄時に甲高い声で叫ぶ・唸る:下部尿路疾患(FLUTD)
トイレに入るたびに「ギャー」「ミャー」と悲鳴のような声を上げる場合、尿路結石や突発性膀胱炎による尿道閉塞が疑われます。特にオス猫の完全閉塞は、急性腎不全や尿毒症を引き起こし、発症から24〜48時間で命に関わる救急疾患です。トイレの往復回数や血尿の有無を即座に確認しなければなりません。
2. 身体に触れられた瞬間に低く唸る(ウー・シャー):関節炎・内臓痛
ブラッシングや抱っこの際に突然低い唸り声を上げたり、シャーと威嚇したりする場合、単なる機嫌の悪さではなく局所的な激痛(変形性関節症、椎間板ヘルニア、腹膜炎、膵炎など)が原因であるケースが多々あります。高齢猫の約80%〜90%が罹患しているとされる変形性関節症は、外見上の跛行(足を引きずる動作)が出にくく、触られた際の発声変化が唯一の発見契機になることも少なくありません。
3. 落ち着きなく甲高い声で鳴き続ける:甲状腺機能亢進症・高血圧症
シニア期(10歳以降)の猫が、目つきを鋭くして落ち着きなく歩き回りながら大声で鳴き叫ぶ場合、甲状腺ホルモンの過剰分泌による甲状腺機能亢進症が強く疑われます。異常な食欲亢進、体重減少、多飲多尿を伴うことが特徴です。