中小企業家同友会の活動において、良くも悪くも最大のハイライトとされるのが同友会経営指針セミナーの実態です。同友会がネット上で「洗脳組織」と揶揄される震源地は、ほぼ例外なくこの合宿型研修にあります。
セミナーでは、参加する経営者が数カ月をかけて自社の理念、10年ビジョン、経営方針、数値計画を徹底的に練り上げます。その過程で待ち受けているのが、先輩経営者による容赦のない追及です。
「この理念は誰のために書いたんだ? 社員を食わせる覚悟が1ミリも伝わってこない」
「綺麗事を並べるな。お前自身が保身に走っているから売上が落ちているんじゃないのか」
密室の会場で、深夜まで赤ペンを入れられ、過去の挫折や社員に対する後ろめたさを突きつけられた経営者たちは、極限の精神状態へと追い込まれます。そして徹夜の議論の末、自らのエゴを削ぎ落とした「真の経営理念」を言語化した瞬間、会場のあちこちで大の大人が号泣し、仲間と抱き合う光景が生まれます。
この劇的なカタルシスを経験した経営者は、別人のように憑き物が落ちた表情で会社に戻ります。しかし、現場の従業員や家族から見れば、その変貌は恐怖でしかありません。
「社長が週末のセミナーから帰ってきた途端、『今日から我が社は人間尊重の経営に生まれ変わる!』と涙ながらに宣言してきた。完全に洗脳されてしまったと思った」
従業員のこうした率直な恐怖感がネット掲示板やSNSに投稿され、同友会の洗脳疑惑とネットの反応として拡散していきます。当人にとっては「経営者としての覚醒」であっても、文脈を共有していない周囲には「危険なセミナーで精神を改造された」としか見えないのです。これこそが、中小企業家同友会の評判と実態の間に生じる決定的な温度差の正体です。