ドラマ放送当時からネット上では、「この物語には実話のモデルがあるのではないか」「海外ドラマのリメイクではないか」といった憶測が飛び交いました。しかし、大恋愛原作実話の真相を調査すると、本作は原作小説や特定のモデル手記を持たない、脚本家・大石静脚本による完全オリジナル作品であることが明確に確認されています。
大石静は制作発表時のインタビューにおいて、「従来の難病モノにありがちな、ヒロインがただ守られるだけの被害者になる構図を意図的に避けた」と語っています。実際、第1話における尚の行動は極めて能動的です。エリート医師との結婚を間近に控えながらも、引っ越しアルバイトの無名小説家である真司に自らアプローチし、病の兆候を感じ取った後も自らの意志で人生の選択を下していきます。
また、医学的アプローチに関しても綿密な取材が行われており、若年性アルツハイマー病(65歳未満で発症する認知症疾患)の初期症状である物忘れの自覚、MCI(軽度認知障害)段階での葛藤、進行に伴う失行・失認のプロセスが克明に描かれました。感情記憶(エピソード記憶)は失われても、情動や身体感覚は最後まで残り続けるという最新の認知症医学の知見がストーリーの骨子に組み込まれていたからこそ、本作は単なるお涙頂戴を超えた、真に迫る人間ドラマとして結実したのです。