フィギュアスケートを巡る一般的な言説において、しばしば誤解されがちなのが「アイスダンス転向=シングルで結果が出なかった選手の逃げ道」という短絡的な見方です。西山真瑚に対しても、シングルから転向した当時にそのような偏見の目を向ける心ない声が一部に存在しました。
しかし、これは現代フィギュアスケートの構造を著しく見誤った誤解です。アイスダンスは、ジャンプこそ跳ばないものの、エッジの深さ、ミリ単位で揃えるツイズルの同調性、音楽の拍を正確に捉えるリズム感、そして高難度リフトを支える強靭な体幹と筋力が求められる、極めて専門性の高いカテゴリーです。むしろシングルで全日本ジュニア選手権上位に進出するレベルの正確なスケーティングスキルを持った男子選手がアイスダンスに本格参戦することは、日本スケート連盟にとっても長年の悲願でした。
また、ネット上では「解散が多い選手は協調性に問題があるのではないか」といった根拠のないパーソナリティ批判が囁かれることがあります。しかし、欧米のアイスダンス強国を見渡しても、ジュニアからシニアへの移行期に2〜3度のパートナーチェンジを経験することは日常茶飯事です。骨格の成長に伴う身長差の変化や、コーチ陣の拠点変更による生活拠点の選択など、競技者としての生存戦略において「解散」は決してネガティブな失敗ではなく、より高みを目指すための不可欠なプロセスなのです。