作中で最も視聴者の心を掴むシーンの一つが、人間になりたいと願うポニョが放つ「ポニョ、宗介好き!」という直球の告白です。そして宗介もまた「ぼくもポニョが好き!」と迷いなく応えます。しかし、この無邪気な好意の交換の裏には、世界の存亡を賭けた重い「約束」が横たわっていました。
ポニョの本名はブリュンヒルデ。北欧神話のワルキューレ(戦乙女)の名を冠しており、人間を捨てて海の魔法使いとなった父・フジモトと、壮大な海の母・グランマンマーレの間に生まれた強大な力を持つ存在です。ポニョが人間になりたいと願い、フジモトが溜め込んでいた強い生命の水(生命の源)を飲み干したことで、世界のバランスが崩壊し、月が地球に近づいて海面上昇を引き起こしてしまいます。
崩壊しかけた世界を救う唯一の条件として、母グランマンマーレが宗介に提示したのが「ポニョの正体が半魚人や魚であっても、変わらずに愛せるか」という試練でした。宗介は水中のドームの中で、魚の姿のポニョを見ても一切たじろぐことなく、「ぼくは、魚のポニョも、半魚人のポニョも、人間のポニョも、ぜんぶ好きだよ」と答えます。
このポニョと宗介の約束の意味とは、外見や種族という条件付きの好意ではなく、「相手の存在そのものを丸ごと受け入れる」という無条件の受容(アガペー)に他なりません。5歳の宗介が誓った純粋無垢な愛によってポニョは人間になる力を得て、狂った天変地異は収束へと向かいました。