外資系企業の高待遇を語る上で避けて通れないのが、「突然の解雇(クビ)」にまつわる現場の実情です。法制度上、日本国内の拠点で働く限り、労働契約法第16条(解雇権濫用の法理)が適用されるため、海外本社のように「当日いきなり即日解雇」を一方的に通告することは法的に困難です。しかし、現場では日本の法規制をクリアするための精緻な仕組みが確立されています。
その代表例がPIP(Performance Improvement Plan:業績改善計画)です。達成困難な高い目標を課され、1〜3ヶ月の期間内でクリアできなければ「能力不足による合意退職」へと誘導されます。現場の社員からは「PIPを提示された時点で、事実上の退職勧告と受け止めるのが暗黙の了解」との声が漏れます。
実際に外資系ITベンダーの営業職を務める30代後半の男性社員は、自著や取材の場で生々しい現場体験を次のように語っています。
「ある月曜日の朝、何の前触れもなくカレンダーに『HR / Business Update』という15分間の非公開ミーティングがセットされました。出席すると画面には人事担当者と法務担当者が並んでおり、本国の方針による部門閉鎖とポジションの消滅を冷徹に告げられました。その日の夕方には社内Slackやメールアカウントへのアクセスが遮断され、翌日には自宅へ返却用PCの回収キットが届いたのです」
一方で、会社側が一方的な解雇を行えない代償として用意されるのが、いわゆるパッケージ(特別退職加算金)です。月給の数ヶ月分から、勤続年数や職位によっては1〜2年分に相当するキャッシュが一括支給され、自主退職に合意する形で幕を引きます。この退職金を資金源として次の外資系企業へと渡り歩く猛者も多く、「解雇リスクを織り込み済みの高給である」という割り切りがコミュニティ内には定着しています。