百合が浜を語る上で欠かせないのが、「自分の年齢の数だけ星の砂を拾うと幸せになれる」というロマンチックな言い伝えです。この伝承の理由と、星の砂の生物学的な正体について検証します。
一般に砂浜の砂は岩石や鉱物が細かく砕けたものですが、百合が浜の白い砂の主成分は、海中に生息する「有孔虫(ゆうこうちゅう)」と呼ばれる単細胞原生生物の殻(炭酸カルシウム)です。特に「バキュロジプシナ(Baculogypsina sphaerulata)」などの種は、外殻に放射状の突起を持っており、これが星の形に見えることから「星の砂(星砂)」と呼ばれています。
与論島を取り囲むサンゴ礁の内側は波が穏やかでありながら適度な海流があり、海藻に付着して生息していた有孔虫が寿命を迎えた後、その殻が波に運ばれて百合が浜周辺の砂州に効率よく堆積します。この自然の集積作用によって、百合が浜の砂浜には高密度の星砂が含まれることになります。
なお、旅情を誘う「年齢の数だけ拾う」というエピソードには、自然保護の観点からも重要な意味があります。砂を無制限に持ち帰ることを防ぎ、訪れた者が手のひらを見つめて自然の美しさに感謝しながら、ささやかな記念として数粒を持ち帰るという節度ある観光文化を根付かせる知恵でもあります。近年は生態系保全のため、砂の過剰な採取を控え、現地の売店で小瓶に入った星砂を購入する旅行者も増えています。