コムギは修行によって念を習得した能力者ではない。生きる術が軍儀しかないという極限の生存本能と、「負けたら死ぬ」という自らに課した究極の制約と誓約が、彼女の念能力を自然発生的に覚醒させた。
メルエムとの過酷な連戦の最中、彼女の目は見えないはずにもかかわらず、盤上の全ての駒の動きと未来の棋譜が光の束となって視界に広がる描写が描かれた。これはオーラを思考力と直感力に100%特化させた覚醒状態であり、戦いの中で進化を続けるメルエムの天賦の才に追いつくための進化でもあった。異形たるキメラ=アントの頂点に立つ王が、命を賭して盤上に魂を捧げる一人の人間に対し、畏怖と敬意を抱いた決定的な瞬間である。