2013年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ(UNESCO)無形文化遺産に登録されて以降、日本料理(和食文化)への国際的関心は高まり続けてきた。しかしここ数年で起きた変化は、従来の「エキゾチックな美食」としての評価とは一線を画している。火付け役の一つとなったのが、Netflixの人気ドキュメンタリーシリーズ『シェフのテーブル: 和食の美学』だ。世界最高峰のクリエイターたちが映し出したのは、食材の命を余すところなく引き出す「出汁(だし)」の旨味と、季節の巡りを小鉢に凝縮する一汁三菜の精神性だった。
和食文化研究の第一人者である熊倉功夫氏は、日本の食体系が持つ「調和の美学」を一貫して説いてきた。ご飯を主食とし、汁と菜を交互に口へ運ぶ「口中調味」のプロセスは、塩分濃度を自然と薄め、胃腸への負担を最小限に抑える構造になっている。海外のフードジャーナリストたちはこのメカニズムを「食べる瞑想(マインドフル・イーティング)」と呼び、過食や肥満に苦しむ西欧社会のゲームチェンジャーとして紹介している。