なぜ彼女は生涯独身を貫いたのか。その経緯解説を紐解くには、十代から自らの才覚だけで荒波を乗り越えてきた生い立ちを見つめる必要がある。名古屋での幼少期を経て、わずか19歳で銀座に店を構えた彼女は、男たちの庇護を受ける立場ではなく、男たちが集うサロンの「主」として君臨した。
当時、女性が一人で事業を興し、夜の銀座で成功を収めるのは並大抵のことではない。自身のペン一本、言葉ひとつで巨額の印税を稼ぎ出す作詞家・作家へと転身したプロセスを見ても、誰かの「妻」という枠組みに収まるスペースなど、彼女のスケジュールにも心境にも最初から用意されていなかったのだ。家族という最小単位の共同体に縛られることを嫌い、自らの才能とプライドだけを頼りに生きる道を選び取った。