バッタの飼育で最も神経を使うべき要素が餌の選定です。一般に「バッタは草を食べる」と一括りにされがちですが、種類によって消化管の構造や好む植物の種類は大きく異なります。主食のミスマッチは餓死に直結するため、捕まえた種類に応じた植物を的確に見極めなければなりません。
トノサマバッタやショウリョウバッタ、クルマバッタなどの大型種は、徹底した「イネ科植物専食」です。道端や土手に自生しているエノコログサ(ネコじゃらし)、ススキ、カラスムギ、メヒシバなどを好んで食します。広葉樹の葉やクローバーなどを入れても口にせず、飢餓状態に陥るため注意が必要です。
一方で、家庭菜園などでもよく見られる小型のオンブバッタは、キク科、シソ科、ナス科、ヒルガオ科などを幅広く食べる「広食性」を持っています。庭のシソやアサガオの葉、ギボウシ、クズの葉などを旺盛に消費します。
身近な野菜を与える際、最も警戒すべきリスクが「残留農薬」です。スーパーで市販されている小松菜やレタス、キャベツは、人間には完全に無害な基準であっても、体重数グラムの昆虫にとっては即効性の神経毒となります。一切れの小松菜を口にした数十分後、口から茶色い消化液を吐き出して痙攣死する事故は極めて多く報告されています。野菜を与える場合は、無農薬栽培であることが確実なものに限定するか、野外で採取した安全な野草を流水で入念に洗浄し、水気を拭き取ってから与える姿勢が求められます。
また、水分補給における「霧吹きの誤用」も命取りになります。バッタの飼育において、生体へ直接霧吹きを吹きかける行為は絶対に避けてください。前述の通り気門が塞がれて窒息するリスクがあるためです。給水は、新鮮な葉についた微細な水滴を吸わせるか、小さなペットボトルのキャップに濡らした脱脂綿を敷いてケースの隅に置く方法が最も安全で効果的です。