『デジタル大辞泉』(小学館)をはじめとする主要な国語辞典の記述を統合すると、「目を向ける」という言葉には大きく分けて以下の2つの根本的意味が存在します。
第1の意味は、「視線をその方向へ向ける。その方を見る」という物理的・視覚的な動作です。そして第2の意味として「関心を向ける、注意を払う」、さらには「特定の観点・見方で対象を捉える」という抽象的・精神的なアプローチが定義されています。辞書の用例として挙げられる「報道各紙はいっせいに非難の目を向けた」という一節は、物理的な視線ではなく、社会的制裁や批評意識というレンズを通して対象を観察・評価している好例といえます。
日常的に「見る(see / look)」と表現する場合、網膜に像が映る受動的な知覚も含まれます。しかし、「目を向ける」という成句を用いた瞬間、そこには観察者の自発的な関心や意図的なフォーカスが宿ります。無関心だった状態から主体的に関心を持つフェーズへと移行する心の動きを、簡潔に表象できる点にこの慣用句の真価があります。