生タコを入手した際、仕上がりの味と食感を決定づけるのが徹底した初期処理です。下処理を怠ると、特有の生臭さが身に染み付くだけでなく、塩分の浸透圧バランスが崩れて身が硬直する引き金となります。
生タコの下処理とぬめり取りにおいては、まず頭(胴部)を裏返して内臓と目、カラストビ(口器)を取り除きます。その後、たっぷりの粗塩(タコの重量に対して5〜8%程度)を振りかけ、両手で体重をかけるようにしっかりと揉み込みます。数分揉むと、筋膜から大量の灰色の泡状のぬめりが浮き出てきます。これを流水で完全に洗い流す作業を、水が透き通るまで2〜3回繰り返すのが基本です。料理人の間では、塩の代わりに米ぬかや片栗粉を使用して吸着させる方法も、身を引き締めすぎない手法として愛用されています。
そして、一般家庭で最も再現性が高く劇的な効果を発揮するのがタコを冷凍して繊維を壊す方法です。生タコのぬめりを取り水気を完全に拭き取った後、ラップで密閉して冷凍庫でマイナス18℃以下で丸一日凍らせます。
細胞内に含まれる水分が氷へと相転移する際、体積が約9%膨張します。この氷の鋭利な結晶が、タコの強靭な筋線維ネットワークを内側から網目状にズタズタに切り裂きます。解凍して加熱調理したタコは、冷凍処理を行っていない生タコと比較して組織の緊張が完全に解かれており、短時間の加熱でも驚くほどの柔らかさと心地よい歯切れを実現できます。