川口駅のプラットホームに立つと、すぐ隣の線路を湘南新宿ラインや上野東京ラインが高速で通過していく光景を日常的に目にします。「なぜこれほど乗降客が多い駅を通過するのか」と疑問を抱く利用者は少なくありません。その根本的な理由は、運行ダイヤの都合以前に「中距離電車用のプラットホームが存在しない」という物理的構造にあります。
川口駅を通る線路は、西側から「京浜東北線(電車線)」「東北本線・旅客線(上野東京ライン・宇都宮線・高崎線)」「東北本線・貨物線(湘南新宿ライン・貨物列車)」の複々線(計6本)が並んでいます。現在、川口駅に設置されているホームは京浜東北線用の1面2線のみ。中距離電車が走る線路にはホームが一切接していません。
歴史を遡ると、国鉄時代の中長距離列車は主要ターミナル間を速達輸送する目的が強く、東京近郊の近距離客は京浜東北線が担うという役割分担が徹底されていました。隣駅の赤羽駅や浦和駅が高架化や路線再編に伴って中距離電車の停車ホームを整備した一方、川口駅周辺は早くから市街化が進み、線路両脇を用地や建物に囲まれていたため、容易にホームを増設できないまま取り残されてしまった歴史的背景があります。