空五倍子色」は何と読む?平安貴族が愛した伝統色の意外な由来と配色を徹底解説

空五倍子色」は何と読む?平安貴族が愛した伝統色の意外な由来と配色を徹底解説

空五倍子色」は何と読む?平安貴族が愛した伝統色の意外な由来と配色を徹底解説に関する疑問や疑問点を徹底的にまとめました。今すぐチェックことができます。

この美しい色彩の由来をたどると、現代人にとっては少々意外とも思える驚きの自然現象に行き当たります。「空五倍子色」の染料となる主原料は、ウルシ科の落葉小高木であるヌルデ(白膠木)の虫こぶです。

初夏、ヌルデの若葉にヌルデシロアブラムシが寄生すると、植物側の異常増殖によって大きな瘤(こぶ)が形成されます。これが生薬や染料として知られる「五倍子(ふし/ばいし)」です。乾燥させた五倍子を割ると中は完全に空洞(うつほ・うつ)になっており、この「中身が空っぽの五倍子」という形態的特徴から、「空五倍子(うつぶし)」と呼ばれるようになりました。

染織工房での取材記録によると、伝統的な草木染めの技法において五倍子は極めて特異な存在です。五倍子は乾燥重量の約50〜70%が良質なタンニン酸(ガロタンニン)で構成されており、天然染料の中でもトップクラスの成分濃度を誇ります。

染液に鉄分を触れさせると瞬時に黒変するため、古くは女性の「お歯黒(鉄漿)」や武士の鎧を染める黒染めの必須材料として重宝されました。しかし、空五倍子色を染め出す際は、あえて微量の鉄分で薄く発色させるか、木灰から抽出した灰汁(アルカリ媒染)や明礬(アルミニウム媒染)で丹念に煮出すことで、あの独特の淡く渋い灰黄褐色を定着させます。職人の絶妙な温度管理と水質のコントロールがあって初めて結実する、極めて高度な染色工芸の結晶なのです。

池田 達也
著者

池田 達也

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。