ウェブ上やアプリストアには「脳トレで短期記憶が倍増する」「特定のドリルで認知症を完全予防」といった甘美な宣伝が散見されます。しかし、神経科学の専門機関によるメタ分析や認知訓練の大規模追跡調査では、冷静な実態が浮き彫りになっています。
ゲーム形式の脳トレアプリを継続した場合、向上するのは「そのゲーム自体のスコアを稼ぐスキル」にとどまり、実生活での仕事の段取り力や学習効率へと汎化(波及)する効果は限定的であるという見解が学術界の主流です。画面上の数字配列を覚える練習をどれほど積んでも、日常生活で鍵を置いた場所を忘れなくなるわけではありません。
それ以上に現代人が直面している真の盲点は、「マルチタスクによる前頭前野の機能麻痺」です。SNSをスクロールしながら動画を流し、仕事のチャットに返信するような生活態度は、脳を「連続的な注意散漫状態」に追い込みます。情報を取り込む入り口(注意機能)が狭まっているために、そもそも短期記憶の領域に情報が登録すらされていないケースが大半を占めているのです。