玉三郎が舞台での『鷺娘』の幕を閉じた今、その伝説を鮮明に体感できる貴重な手段がシネマ歌舞伎『鷺娘』だ。舞台の臨場感を損なうことなく、むしろ劇場の最前列でも肉眼では捉えきれない繊細な表情の変化や、衣装の細やかな刺繍、汗の粒までもが高精細カメラによって捉えられている。
スクリーンを通じて対面する鷺の眼差しには、舞台全体を眺めるのとはまた異なる底知れぬ凄みが宿る。映画館の音響システムで鳴り響く三味線の鋭い撥音や雪を踏みしめる衣擦れの音は、観客を異空間へと完全にトリップさせる。映画というメディアとの融合により、この歴史的傑作は時空を超えて輝き続けている。