高級和牛生ハムの製造には、一般的な食肉加工をはるかに超える緻密な温度・湿度管理が求められます。日本の食品衛生法における「非加熱食肉製品」の規格基準は世界トップクラスに厳格であり、専用のクリーンルームと熟成庫を備えた限られた加工施設でしか作ることができません。
黒毛和牛の脂は融点が約25℃前後と非常に低く、手のひらに乗せるだけでも溶け始めます。塩漬けの工程では、肉の水分活性をコントロールしながら岩塩や数種類のハーブを職人が手作業で刷り込み、数週間にわたってじっくりと脱水・乾燥熟成を重ねます。余分な水分が抜けることでアミノ酸が劇的に増加し、口に含んだ瞬間に旨味の奔流となって押し寄せるのです。