家庭の食卓で長年親しまれてきたこの2つの調味料を理解する第一歩は、「カテゴリー名(総称)」と「特定の商品名」という言語的な位置づけを整理することです。
「だしの素」という言葉は、かつお節や昆布、椎茸などのエキスに食塩や調味料を加えた和風顆粒だしの違いを包括する一般名称として広く用いられています。日本で初めて粉末・顆粒状のだしを開発した老舗メーカー・株式会社シマヤが1964年に発売した製品が「シマヤだしの素」であり、その圧倒的な普及によって「だしの素=顆粒和風だし全般」を指す代名詞として定着しました。
これに対し、「ほんだし」は味の素株式会社が1970年に世に送り出した特定ブランドの固有商品名です。うま味調味料の研究を長年積み重ねてきた同社が、家庭で手軽に本格的なかつおだしの風味を再現できるよう威信をかけて開発した製品であり、いわば「だしの素という大海原の中に存在する、トップブランドの傑作」と位置づけられます。日常会話において両者が混同される背景には、バンドエイドと絆創膏、宅急便と宅配便のように、卓越した商品名がジャンルそのものを代表してしまっている事情があります。