地上絵をめぐっては、長年にわたり昭和・平成のテレビ特番や雑誌を通じて様々なオカルト言説が流布してきました。「宇宙人の滑走路説」「触れた者に災いをもたらす呪いの都市伝説」、そして「古代技術を逸脱したオーパーツの謎」といった言説です。これらの噂の真偽について、科学的見地から冷静に検証します。
まず「上空からしか見えない絵を古代人が描けるはずがない=宇宙人説」ですが、これは完全な誤解です。ナスカの土壌は、表面の黒褐色に酸化した小石を取り除くと、下から白っぽい石灰質の土壌が露出する性質を持っています。現地の実験考古学において、杭と縄を用いた単純な拡大法(グリッド法)を使えば、地上にいる人間だけの力で狂いなく巨大な絵文字を描けることが実証されています。神秘化されがちな直線も、目印となる杭を直線上に並べて視覚的に結んでいくだけで正確に引くことが可能です。
また、ネット上でセンセーショナルに拡散された「マリアのミイラ騒動」も恐怖心を煽る大きな要因となりました。2017年頃、ペルーのナスカ近郊で「指が3本しかない異形のミイラが発見された」として、エイリアンの遺体ではないかと国際的な論争を巻き起こした事件です。しかし、ペルーの法医学検察庁や国立考古学人類学歴史学博物館による厳密な科学鑑定の結果、このミイラは本物の古代人の遺骸に動物の骨や現代の接着剤を継ぎ足して作られた悪質な偽造品であることが断定されています。古代アンデス文明の尊い遺産を商業目的で冒涜したフェイクニュースに過ぎませんでした。
呪いの噂に関しても、砂漠の強風と激しい寒暖差、標高に起因する体調不良が過剰に脚色されたものが大半です。荒唐無稽なオカルトを剥ぎ取った後に残る「極限の環境下で、人間が生き延びるために神へ血を捧げ続けた」という歴史的現実こそが、いかなるフィクションよりも重く、恐ろしい真実なのです。