日本国内における野生馬の存在を語る上で、外せない場所が宮崎県串間市に位置する都井岬(といのみさき)です。日向灘に突き出た標高約250メートルの緑豊かな丘陵地帯には、約100頭前後の馬たちが群れ(ハーレム)を形成し、完全に自給自足の生活を営んでいます。
彼らは厩舎(きゅうしゃ)で飼育されているわけでも、人間から配合飼料を与えられているわけでもありません。春から夏にかけては岬に生い茂るシバや野草を食み、冬になれば草の根や樹皮をかじりながら自力で飢えをしのぎます。出産や病死、縄張り争いといった生命活動のすべてが自然の摂理に委ねられており、学術的にも極めて珍しい「半野生(フェラルホース)」の生態系を維持しています。
その学術的・文化的な希少性が高く評価され、御崎馬とその生息地は1953年に国の天然記念物に指定されました。太平洋を見下ろす断崖の草地で風にたてがみをなびかせる姿は、まさに日本国内で出会える本物の野生の情景です。