不動産取引において、住戸内で起きた事件・事故は「心理的瑕疵(しんりてきかし)」と呼ばれ、借り手や買い手に対する法的な説明責任が発生します。長年その判断は不動産業者の裁量や過去の裁判例に委ねられていましたが、トラブルの頻発を受けて国土交通省が本格的な指針を取りまとめました。これが実務の決定打となった事故物件に関する国交省ガイドライン(人の死の告知に関するガイドライン)です。
この指針によって、どのような事象に事故物件の告知義務が発生するのかが明確化されました。自然死や自宅内の日常生活における不慮の事故(階段からの転落、入浴中の溺死、誤嚥など)については、原則として告知義務の対象外と定められています。高齢化社会において自宅での看取りが増える中、過度な取引制限を防ぐ狙いがあります。
一方で、他殺、自殺、火災による死亡事案は無条件で告知が必要です。また、本来は告知不要であるはずの自然死であっても、発見が大幅に遅れて遺体の腐敗が進み、特殊清掃や孤独死に伴う大規模な消臭・リフォームが行われた場合には心理的瑕疵と認定され、賃貸契約において発生からおおむね3年間の告知義務が発生します。