飼育開始前と後で最もギャップが大きいのが、ネット上で流布されている誤った常識です。メディアやSNSが作り上げた「手軽な癒やし」という虚像を解体する必要があります。
誤解1:「猫は完全室内飼いなら手がかからず放置してよい」
犬のように毎日の散歩が義務付けられない反面、狭い室内に閉じ込められた猫は極めて高度な環境エンリッチメント(刺激と退屈の解消)を要求します。高低差のある立体空間の確保、狩猟本能を満たす毎日の遊び、清潔な水とトイレの管理を怠れば、過度のストレスから自傷行為(過剰グルーミングによる脱毛)や異常攻撃行動に直結します。手がかからないのではなく、「精神的ケアのアプローチが犬と異なるだけ」というのが獣医行動診療科の共通見解です。
誤解2:「猫アレルギーは毛の短い品種なら発症しない」
前述の通り、アレルゲンは皮脂や唾液に含まれる「Fel d 1」タンパク質です。短毛種であろうが、無毛に近いスフィンクスであろうが、唾液で全身をグルーミングする以上、アレルゲンは室内に確実に拡散します。「低アレルギー猫」として高額で取引される品種であっても完全に抗原がゼロになるわけではなく、アレルギー体質の人間にとっては発症リスクを根本的に排除できるものではありません。
誤解3:「懐かない猫も時間をかければ必ず甘えん坊になる」
子猫期の「社会化期」(生後2週齢〜9週齢頃)に人間と友好的に触れ合っていない野良出身の成猫や、極度に警戒心の強い遺伝形質を持つ個体は、何年同居しても人間に体を触らせないケースが多々あります。「抱っこして喉をゴロゴロ鳴らす姿」を夢見ていた飼い主にとって、数年間家庭内内乱のように威嚇され、隠れ続けられる生活は、深い挫折感と孤独感を生み出します。