芸能界の頂点に君臨しながら、なぜ森田夫妻は子どもをもうけなかったのか。ネット上では「不妊治療の挫折」「仕事の多忙」といった俗説が流布された時期もありましたが、真相はタモリ本人の人生哲学と生い立ちに深く結びついています。
タモリ子供いない理由の根底にあるのは、幼少期に経験した過酷な家庭環境です。タモリは福岡市南区に生まれましたが、物心つく前、わずか3歳前後の頃に両親の離婚を経験しています。母親は別の男性と再婚し、実父も家を離れたため、少年時代のタモリを引き取って育て上げたのは父方の祖父母でした。
祖父母は深い慈愛をもってタモリを育てましたが、一般的な「父母と子ども」から成る核家族のぬくもりを実感する機会は極めて乏しかったと伝えられています。小学3年生の時には、電柱から垂れ下がっていたワイヤーが右目に突き刺さり、失明するという凄惨な事故にも遭遇しました。こうした逆境と孤独の中で、少年・森田一義は物事を客観視する冷徹な視線と、独特のニヒリズムを身につけていったのです。
過去の対談や親しい関係者の証言によると、タモリは自身の生い立ちを振り返りながら「自分自身が精神的に子どものままであり、父親になる自信が持てない」「自分のような複雑な境遇の人間が、本当に子どもを幸せに育てられるのだろうか」という葛藤を吐露していたとされます。血脈の連鎖に対する慎重な自制心が働いたことは、心理学的にも極めて自然な帰結といえます。
もう一つの決定的な要因は、愛妻に対する深い愛情と敬意です。かつてタモリは周囲に対し、「もし子どもができたら、妻の愛情が子どもに向いてしまう。自分は妻を独占したいし、一生2人きりの恋人同士のような関係でいたい」という趣旨の言葉を残しています。自身の生い立ちに対する葛藤を昇華させ、「生涯をかけて妻一人を愛し抜く」という純粋な選択へと着地したのが、子どもを持たなかった真の理由です。