読者が最も気にする「この明るさは職場で許されるのか」という問いに対し、大手人材サービス各社が実施した職場身だしなみ規定の調査データを参照すると、民間企業の就業規則において「髪色の基準を設けている」企業のうち、約68%が『7〜8トーンまで』を指定しています。
つまり、制度上は髪色10トーンオフィス許容範囲から外れている職場が過半数を占めるのが日本の組織社会の現実です。ただし、近年は髪型・髪色の自由化を打ち出す企業や小売チェーンが増加しており、ITベンチャーやコールセンター、飲食業の一部では10トーンはおろかハイトーンまで解禁される動きが広がっています。一方で、銀行・保険などの金融業、ホテル・百貨店などの格式高い接客業、病院・福祉施設では依然として厳格に8トーン以下が死守されています。
なぜ10トーンがこれほど現場で議論を呼ぶのか。取材を進めると、企業側が下す髪色10トーン職場NG理由には、単なる「規則だから」という形式論にとどまらない、以下の3つの現実的背景が存在します。
第一に、オフィスのLED照明や太陽光による「見え方の増幅」です。ヘアサロンの落ち着いた暖色系ダウンライトの下では「上品なブラウン」に見えていた髪が、オフィスの白色蛍光灯や自然光が差し込む執務スペースに入った途端、2段階ほど明るく跳ね上がって見えます。「美容室では控えめに見えたのに、出社した瞬間に上司から指摘された」というトラブルの典型例です。
第二に、「染めたて」ではなく「色落ち後の露出」問題です。10トーンで染めた毛髪は、染料がしっかり入っている施術直後こそ深みがありますが、2〜3週間が経過して表面の染料が剥がれ落ちると、ベースの脱色された髪質が露出し、実質的に11〜12トーン相当の明るさへ浮き上がってしまいます。人事担当者が問題視するのは、この退色時に生じる「パサつき」と「黄ばみ」による清潔感の低下です。
第三に、組織内の「同調バイアス」と世代間ギャップです。組織社会学の知見では、集団の多数派が属する基準(この場合は7〜8トーン)から外れた外見的特徴は、無意識のうちに「協調性の欠如」や「業務への集中力不足」といった不当な心理的ラベリングを引き起こしやすいとされます。特に年配の役員や外部のクライアントと対面する場面では、本人の意図と関係なくフォーマル度の欠落として処理されてしまうリスクを孕んでいます。