ネット上の議論や一部の批評では、大谷の通算成績に関してしばしば見当違いな誤解や過小評価が散見されます。その代表例が「通算勝利数や通算安打数だけを見れば、歴代トップ層には遠く及ばないのではないか」という指摘です。
従来の野球殿堂基準は、通算3000安打や通算300勝といった「単一ポジションでの長期的な積み上げ」を前提に設計されています。大谷はプロ入りから5年間をNPBで過ごし、さらに2度の右肘靭帯再建術を経験しているため、打席数や登板回数の絶対値では単一専任の選手より少なくなるのは必然です。
しかし、この見方はセイバーメトリクスの本質である「ロースター枠の節約価値」を見落としています。1人でエース級の先発投手と中軸打者を兼任することは、ベンチ入り枠を実質的に「1枠」増やしていることと同義です。救援投手を1人多くベンチに置ける戦術的アドバンテージは、現代野球のデータサイエンスにおいて年間で数勝分の価値があると試算されています。
また、「DH専任の年は守備に就かないため価値が低い」という論調も、2024年の歴史的スタッツによって完全に論破されました。守備につかないマイナス補正を、圧倒的な打撃力と盗塁成功率93%超の走力で相殺し、WARでリーグ首位を争った事実は、ポジションの固定観念がいかに時代遅れであるかを浮き彫りにしています。