インターネット上で散見される「重曹クエン酸水は危険」「飲み続けると体を壊す」といった言説の根底には、化学的・生理学的な事実と、極端な誇張が混ざり合っています。噂の核心にある2大リスクを客観的に解剖します。
1. 塩分(ナトリウム)の過剰摂取リスク
重曹の正式名称は「炭酸水素ナトリウム(NaHCO₃)」です。名前に「ナトリウム」が含まれている通り、重曹を摂取することは実質的に塩分を摂取することと同義です。化学式に基づく換算では、重曹1gあたり約0.69gの食塩相当量が含まれています。
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」において、1日の塩分摂取目標量は成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。もし「健康に良いから」と1日に何杯も重曹クエン酸水をがぶ飲みし、重曹を5g以上摂取してしまえば、それだけで約3.5g前後の塩分を余分に上乗せすることになります。知らず知らずのうちに塩分過多に陥り、むくみや血圧上昇、さらには腎臓への負荷を招く原因になりかねません。
2. 胃痛と消化機能への影響
重曹は本来、胃酸過多を抑える制酸薬として医薬品にも使われるアルカリ性の物質です。胃酸を中和する作用があるため、胸やけの緩和に役立つ側面がある一方で、過剰に摂取すると胃液の酸性度を低下させ、かえって消化不良や胃痛を引き起こすことがあります。
また、重曹とクエン酸が反応して生じる炭酸ガスによって胃が急激に膨張し、胃壁が刺激されて不快感を覚えるケースもあります。胃潰瘍の既往歴がある方や胃粘膜が敏感な方は、空腹時の一気飲みを避ける配慮が欠かせません。
「がんが治る」「血液をアルカリ化する」という言説の誤謬
SNS上の一部コミュニティでは「重曹クエン酸水で体内の酸性化を防ぎ、あらゆる病気が治る」といった過激な医療デマが拡散されることがあります。しかし、人体の血液pHは恒常性(ホメオスタシス)という極めて精緻な生体機能によって、常に「7.35〜7.45」という弱アルカリ性の狭い範囲に厳密に保たれています。食品や飲料によって血液そのもののpHが恒久的に変動することは医学的にあり得ません。民間療法を盲信して正規の医療から遠ざかる事態は断固として避けるべきです。