この疾患の名称は、16世紀末に英豪の劇作家ウィリアム・シェイクスピアが描いた傑作戯曲『オセロ』に由来している。巧みな奸計によって妻デズデモーナの不貞を疑わされ、狂気と嫉妬の果てに愛する妻を手にかけてしまう悲劇の主人公オセロの姿そのものだからだ。
現代の精神医学においてこの病態を定式化したのは、1955年にイギリスの精神科医であるジョン・トッド(John Todd)だ。彼が提唱したこの病態は、明確な証拠がないにもかかわらず「配偶者が浮気をしている」という強固な誤った確信に囚われる嫉妬妄想(Delusional Jealousy)の一種である。どれほど論理的に反証されても、本人の頭の中では「浮気の証拠」へとすり替えられてしまう恐怖のメカニズムを持っている。