ネット上では「ティッシュに少し付くだけなら心配ない」「鮮血なら痔だから平気」といった言説が散見されます。しかし、消化器専門医の見解では、心配いらない血便の特徴として断定できる医学的根拠は存在しません。強いて言えば、「前日の過度なアルコール摂取や激しい下痢の直後、硬い便を無理に出した際に肛門がピリッと痛み、ペーパーに数滴の鮮血が付着して翌日以降は完全に止まった」というケースであれば、肛門皮膚の一時的な裂傷(急性裂肛)の公算が高いといえます。
血便で鮮血が少量出る原因の多くは、肛門縁に近い部位での出血です。便の通過時に粘膜が擦れて微小血管が切れることで、酸化していない鮮やかな赤色の血液が付着します。また、血便が一度だけ出た理由としては、硬便による一過性の擦過傷や、腸管内の一時的な強い蠕動運動に伴う微小な粘膜出血などが考えられます。
注意しなければならないのは、「出血が一度で止まった=病気が治った」わけではないという点です。大腸ポリープや早期の大腸がんは、便が患部を擦過した時だけ出血し、その後数週間から数ヶ月にわたり出血が止まる周期性を持っています。「出血が続かないから大丈夫」と思い込むことこそが、病変の発見を遅らせる最大の落とし穴です。