金沢・野村家はなぜ世界を魅了するのか|名庭園の秘密と見どころ

金沢・野村家はなぜ世界を魅了するのか|名庭園の秘密と見どころ

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野村家の歴史を紐解くと、加賀藩における武士の身分構造と、明治維新がもたらした激しい社会変動の縮図が浮き彫りになります。

この屋敷のルーツは、加賀藩祖・前田利家に仕え、数々の合戦で武功を立てた重臣・野村伝兵衛信貞(のむらでんべえのぶさだ)に遡ります。信貞は禄高1,200石を誇る中級上席の上級武士であり、代々馬廻組頭や軍監などの要職を歴任しました。長町一帯に広大な屋敷を構え、加賀藩の武家社会において確固たる地位を築いていたのです。

しかし、明治維新による廃藩置県と秩禄処分が武士階級に壊滅的な打撃を与えます。多くの藩士が職と俸禄を失い、屋敷の維持が不可能となって土地を手放していきました。野村家も例外ではなく、広大な敷地は分割され、当時の建造物の大半が取り壊されるという歴史の荒波を経験しました。

現在残る壮麗な屋敷の姿は、大正時代に豪商・久保彦兵衛が私財を投じて整備したことによって蘇ったものです。北前船の交易や農業経営で財を成した久保家が、自らの別邸を構えるにあたり、加賀三千石の豪農・久保家の旧邸(大聖寺宿の豪邸)から一部をこの地へ移築。加賀武士の武威を象徴する格式高い門構えや庭石に、近代の豪商が粋を凝らした総檜造りの建築美が合流しました。野村家は、武士の遺産と町衆の富と美意識が交差した、極めて稀有な文化財なのです。

山崎 陸
著者

山崎 陸

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