ファンが聖地巡礼を行う際、しばしば混乱するのが「糸守町の地理的ロケーション」です。結論から言えば、糸守町という自治体は実在しません。物語の舞台は、複数の実在する地域のエッセンスを巧みに融合させたハイブリッドな構造を持っています。
作中の設定上、糸守町は岐阜県飛騨地方の山奥にあるとされています。飛騨古川駅や気多若宮神社、落合バス停など、三葉たちの日常生活や瀧の足取りを辿るスポットは岐阜県側に集中しています。一方で、あの広大で神話的な存在感を放つ「湖」そのもののビジュアルに関しては、飛騨地方には該当する巨大な天然湖が存在しません。
そこで視覚的シンボルとしてクローズアップされたのが、盆地形状が酷似した長野県の諏訪湖でした。つまり、町の文化や方言、生活圏は飛騨から、風景のスペクタクルは信州・諏訪からというように、美しく再構築された世界観が糸守町の正体なのです。