知床と大型野生動物の歴史を語る上で欠かせない存在がある。かつてアラスカや北海道の壮大な自然をカメラで捉え、人間と野生動物の関係性を深い洞察で見つめ続けた写真家・星野道夫の眼差しだ。彼が遺した作品や哲学は、今なお知床の自然保護の思想的支柱として生きている。
また、かつて大きな反響を呼んだNHKスペシャル「知床 ヒグマの王国」などの優れたドキュメンタリー映像は、過酷な北の大地で脈々と受け継がれてきた命の循環をありのままに描出し、日本中の人々に畏怖の念を抱かせた。自然を単なるレジャーの場としてではなく、多様な生命が自律的に生きる聖域として捉える視線。それこそが、知床が世界自然遺産として評価された根底にある精神と言える。