患者から最も多く寄せられる疑問が、ジクトルテープ痛い場所に貼らない理由です。「ひざの軟骨がすり減って痛むのに、なぜ平らな胸や背中に貼るのか」という疑問は、従来の湿布薬に対する固定観念から生じます。
この疑問を解く鍵こそが、ジクトルテープ全身作用の仕組みにあります。従来の冷感湿布や温感湿布、さらにはケトプロフェン等を含有する局所作用型テープ剤は、貼った直下の筋肉や関節組織に有効成分を浸透させることを目的としています。一方、ジクトルテープ75mgは、独自の経皮吸収技術(S-TTS技術など)により、皮膚から吸収されたジクロフェナクが毛細血管網を通じて全身の体循環血中へと移行します。つまり、内服薬(ボルタレン錠など)を飲んだときと同様に、血液循環を介して全身のあらゆる炎症部位・疼痛部位に成分が運搬されるシステムです。
痛む関節は往々にして皮膚が薄く、曲げ伸ばしによってテープが剥がれやすい過酷な環境にあります。わざわざ不安定な関節に貼らなくても、血流が豊富で皮膚が強く、広くて密着しやすい部位に貼るだけで、患部の痛覚受容体や炎症局所に有効成分がしっかりと届く合理的なドラッグデリバリーシステムが確立されています。
それにもかかわらず、内服薬ではなくあえてテープ剤としてジクトルテープ処方される理由と真相には、明確な治療上のアドバンテージがあります。経口NSAIDsは服用直後に血中濃度が急上昇(スパイク)し、胃粘膜を直接刺激するリスクがあるのに対し、経皮吸収型は24時間かけて極めて穏やかに安定した血中濃度を維持します。これにより、夜間から早朝にかけての持続的な痛みをブロックできる上、嚥下機能が低下した高齢者や、消化器への直接接触による初期刺激を回避したい患者に対する極めて有用な治療選択肢となっています。