法的に合法化が進んだからといって、世間のルールが一夜にして変わるわけではない。肌に消えない絵柄を刻む前に、現在の社会的な摩擦の実態を直視しておく必要がある。
まず、温浴・宿泊観光業界の対応は真っ二つに割れている。インバウンド観光客の急増に伴い、防水シールで隠せるサイズであれば入浴を許可する施設や、貸切風呂での利用を促すリゾートホテルは確実に増えた。しかし、伝統的な老舗温泉街や公衆浴場、大衆サウナなどでは、依然としてサイズやデザインを問わず「一切お断り」を掲げる施設が根強く存在する。トラブルを避けるため、施設ごとの事前確認は現在も欠かせない。
さらに厳しいのが就職やキャリアへの影響だ。金融機関、公務員、教育関連、医療・介護施設、航空業界などでは、身だしなみ規定(ドレスコード)において露出するタトゥーを明確に制限しているケースが圧倒的多数を占める。一度彫ったインクを完全に消し去ることは現代の最新レーザー技術を用いても容易ではなく、多額の費用と皮膚の瘢痕化リスクが伴う。自己表現としての自由と、社会生活における制約。そのトレードオフを計算に入れない軽はずみな決断は、取り返しのつかない後悔を招く。