過去の掘り返しには、ジェンダーによる思考プロセスや記憶処理の傾向の違いも如実に表れます。夫婦問題相談の現場でも、「妻が何年も前の出来事を昨日のことのように怒る」「夫が表面上は納得したふりをして、後から陰湿に根に持っている」という対照的な相談が後を絶ちません。
女性が過去の出来事を持ち出す背景には、感情とエピソード記憶を結びつける情報処理特性があります。脳機能や心理言語学の研究において、女性は感情の揺れ動きを伴う記憶をネットワーク状に関連づけて保存する傾向が指摘されています。現在の「悲しい」「寂しい」「不安だ」という情動がトリガーとなり、過去の同質の感情を伴った記憶が芋づる式に呼び起こされます。女性側にとっては「別の話を持ち出している」感覚ではなく、「今感じている苦しみと同じ痛みが過去にもあった」という連続した事実を訴え、共感を求めているケースが目立ちます。
対して男性が過去を根に持つ場合、自尊心の毀損や「結論が出ないことへの不全感」が根底にあります。論理的解決や上下関係を重視しやすい男性心理において、過去にプライドを傷つけられた経験や、理不尽に敗北感を味わわされた記憶は「未解決の屈辱」として残り続けます。感情をその場で言語化して発散することが苦手な男性ほど、内面に鬱屈した怒りを蓄積させ、何かの折に冷徹なトーンで過去の事実を突きつける「復讐的蒸し返し」に走りやすい傾向が見られます。