小児医療の現場やネット上の闘病記録で頻繁に見られるのが、インフルエンザ脳症の初期兆候を見落としたことに対する強い後悔です。多くの保護者が口を揃えるのは、「インフルエンザの高熱でうなされているだけだと思った」「夜中だったため朝まで様子を見てしまった」という初動の遅れです。
インフルエンザ脳症は、ウイルスそのものが直接脳を破壊するだけでなく、ウイルスの侵入に対して免疫システムが暴走する「サイトカインストーム」を引き起こし、脳浮腫(脳の腫れ)を急速に進行させます。そのため、普段の風邪で見られるような「機嫌が悪い」「熱でぼんやりしている」状態との境界線が非常に見えにくく、それが発見を遅らせる最大のトラップとなっています。
「もっと早く救急車を呼んでいれば後遺症を防げたのではないか」という自責の念に苛まれないためには、インフルエンザ脳症特有の異常行動と単なる発熱症状の決定的な違いをあらかじめ頭に叩き込んでおく必要があります。