一般的なオーディオブックや読み聞かせアプリと、「おとえほん」の決定的な違いはどこにあるのか。その核心は、坂本龍一氏のツアーや多数の一流アーティストのプロデュースを手掛けてきた音楽家・守時タツミ氏が構築した、極めて緻密な音響設計にあります。
市販されている多くのアニメや電子絵本は、子どもの注意を惹きつけるためにテンポが速く、ブラス(金管楽器)やシンバルを多用した高周波のアタック音が目立ちます。これらは覚醒レベルを一時的に引き上げるため、寝かしつけの現場では逆効果になりがちです。対して「おとえほん」では、生のストリングスや木管楽器を基調としたアコースティックサウンドが採用され、心拍数に近いゆったりとしたテンポ(BPM 60〜70前後)で進行します。このゆらぎが、脳波を緊張状態のβ波からリラックス状態のα波、さらには入眠時のθ波へとスムーズに誘導するのです。
さらに注目すべきは、おとえほんのナレーションが果たす役割です。女優の南果歩氏や鶴田真由氏ら実力派キャストが吹き込む声は、過剰な演技や誇張を排し、まるで耳元でそっと語りかけるような温かみと適度な距離感を保っています。登場人物になりきりすぎて興奮させることなく、静寂の中に染み渡るトーンが子どもの安心感を極限まで高める構造となっています。