昭和から平成期にかけての芸能界では、熱心に子どもを売り込む親を「献身的なステージママ」として美談に仕立て上げる風潮が根強く存在しました。しかし、遠野なぎこが直面していた現実は、親による子どもの人格否定と経済的搾取に他なりませんでした。
ネット上では時折、「なぜ成人してからすぐに親と絶縁しなかったのか」「なぜそこまで耐え続けてしまったのか」という疑問の声が上がることがあります。しかし、これこそが心理学でいう「トラウマ的絆(Traumatic Bonding)」と「母娘の共依存」の典型的な罠です。
幼少期から「お前は価値がない」「私が面倒を見てやっている」と刷り込まれた子どもは、自己肯定感を徹底的に破壊され、「自分を虐待する親にこそ認められたい」という強い承認欲求のループに囚われます。遠野なぎこ自身も、成人後も母への経済的支援を断ち切れず、何度も裏切られ傷つきながらも関係を断絶できなかった苦しみを吐露しています。外部から単純に「縁を切ればいい」と片付けられない深い心理的拘束があった点が、この問題の最も根深い盲点です。