今でこそ信じがたい話ですが、1996年2月の発売当時、ゲーム業界関係者の間では「大ヒットは難しい」と囁かれていました。当時はすでに据え置き機の次世代ゲーム機(プレイステーションやセガサターン)が市場を席巻し始めており、発売から7年が経過していたゲームボーイ市場は完全に黄昏時を迎えていたためです。
事実、任天堂公式発表のデータや当時の販売推移を振り返っても、初週の売上は約12万本と、決して派手なスタートダッシュではありませんでした。しかし、ここから前代未聞のロングラン劇が幕を開けます。起爆剤となったのは、子どものコミュニティにおける強烈な「口コミ」でした。
従来のRPGは「1人で遊んでエンディングを見たら終わり」が一般的でしたが、『ポケットモンスター 赤・緑』は通信ケーブルを用いた「対戦」と「交換」をゲームサイクルの根幹に据えていました。自分のソフトだけでは手に入らないポケモンを友達と交換し、育てた自慢のパーティで競い合う面白さが、小学校の教室や公園を通じて瞬く間に伝播。発売から半年、1年と経過するにつれて販売ペースが加速するという、ゲーム流通の常識を覆す大逆転現象を引き起こしました。