「比例代表は政党の名前を書けばよい」と思い込んでいると、参議院選挙の投票所で足をすくわれます。日本の国政選挙では、衆議院と参議院でまったく異なるシステムが採用されています。この差異を理解していないと、せっかくの1票が無効になったり、意図しない候補者の当選に手を貸してしまうことになります。
比例代表の投票方法(個人名と政党名)における最大の違いは、衆議院が「拘束名簿式」、参議院が「非拘束名簿式」を採用している点にあります。
衆議院の比例代表は、全国を11のブロック(北海道、東北、北関東、南関東、東京、北陸信越、東海、近畿、中国、四国、九州)に分割して行われます。有権者は「政党名」のみを投票用紙に記載します。候補者の名前を書いてしまうと「無効票」として処理されるため、細心の注意を払わなければなりません。党があらかじめ提出した名簿順位の上位者から順に、獲得議席数に応じて自動的に当選が決まります。
対照的に、参議院比例代表の仕組みは、日本全国を1つの単位とする「全国比例」です。有権者は「政党名」を書いてもよいですし、名簿に載っている「候補者個人名」を直接書いても構いません。集計時には、個人名で投じられた票と政党名で投じられた票がすべて合算され、その政党全体の総得票数として計算されます。その総得票数をもとにドント式で各党の獲得議席数が決定された後、党内での当選者は「個人名票を多く集めた候補者順」に上から決まっていく仕組みです。
ただし、参議院には2019年の公職選挙法改正で導入された「特定枠」という例外規定が存在します。特定枠に指定された候補者は、個人名での得票数にかかわらず、党の獲得議席の範囲内で最優先で当選となります。過疎地域の代表確保や政策エキスパートの登用を名目に導入された制度ですが、有権者の直接的な個人得票序列を覆す仕組みであるため、制度設計をめぐる論争が今なお続いています。