『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』第8話「無一郎の無」および第9話「霞柱・時透無一郎」において、アニメファンの度肝を抜いたのが、無一郎の過去回想に登場した双子の兄・時透有一郎の存在でした。そしてエンドロールで「時透無一郎/時透有一郎:河西健吾」とクレジットされた際、SNS上では「まったく違う人物の声に聞こえた」「双子とはいえ、同一人物が演じていたのか」と驚愕の声が殺到しました。
雑誌インタビューや特番などの証言によると、この一人二役の収録は、双方のキャラクターのテンションが極端に異なるため、別録り(まず片方のキャラクターの台詞を全て収録し、次に掛け合いの相手を収録する手法)で行われたパートが多かったと明かされています。特に鬼に襲われて瀕死の重傷を負いながら、自らの命を削って弟の無事を神仏に祈る有一郎の断末魔の叫びは、河西健吾が声を限界まで枯らす勢いで挑んだ魂の叫びでした。
実は河西健吾は、『東京リベンジャーズ』においても双子の兄弟である「河田ナホヤ(スマイリー)」と「河田ソウヤ(アングリー)」を一人二役で演じた実績があります。似通ったDNAを持ちながら全く異なるメンタリティを持つ双子の演じ分けにおいて、声質そのものを極端に変革するのではなく、「呼吸のリズム」「言葉を発する前のタメ」「胸腔と鼻腔の共鳴比率」の微細なコントロールによって別人格を立ち上げる匠の技は、業界内でも屈指の職人芸として称えられています。