「深夜2時、冷凍庫の前でしゃがみ込み、タッパーに固まった霜や氷を無我夢中で削り取って食べていた。家族に見られたら異常者だと思われるのが怖くて、台所の明かりを消して隠れて食べていたんです」――ある30代女性は、当時の凄惨な体験をそう振り返ります。
SNSや知恵袋などのコミュニティを検証すると、同様の生々しい声が数千件規模で散見されます。「スーパーの鮮魚コーナーにある無料の保冷用氷をその場で口に入れたくなった」「氷を噛み砕くときの『バリッ』という音と衝撃がないと、頭が締め付けられるようにパニックになる」といった告白は、この疾患がいかに強迫的な性質を持つかを物語っています。
とりわけ注意が必要なのが、妊婦のケースです。妊娠後期に入ると、胎児の成長と胎盤循環のために母体の血液量は約1.4倍に急増しますが、赤血球の増加が追いつかず血液が大幅に希釈されます。母胎から胎児へ優先的に鉄分が移行するため、急速なフェリチン枯渇が起き、「妊娠した途端に冷凍庫の氷を朝から晩まで食べ尽くすようになった」という訴えが産科現場で頻発しています。放置すれば低出生体重児のリスクや産後うつの要因にもつながるため、産科医への迅速な相談が欠かせません。