ネット上で定期的に浮上する「宮沢りえが劣化したのではないか」という噂。その震源地を辿ると、テレビ出演時の特定のカットを切り取った画像や、照明条件の悪い記者会見でのスナップショットがSNSで拡散されたことに端を発しています。一般に老けたと言われる原因として挙げられるのは、頬の痩せ感や目元の小ジワ、フェイスラインのシャープさの変化です。しかし、これらの指摘は客観的な事実と乖離した一面的な見方に過ぎません。
そもそも宮沢りえの若い頃は、11歳でのモデルデビュー、1987年の「三井のリハウス」初代リハウスガール「白鳥麗子」役で社会現象を巻き起こしました。さらに1991年に刊行された篠山紀信撮影の写真集『Santa Fe』は累計発行部数155万部という金字塔を打ち立て、日本中の目に「奇跡の美少女」として焼き付きました。大衆の記憶にあるのは、10代後半の瑞々しい水分量を誇る肌と完璧な造形美です。その強烈な原体験がアンカー(基準値)として固定化されているため、50代を迎えた生身の人間としての自然な加齢が、一部のネットユーザーには過剰な「劣化」として映ってしまう構造的な錯覚が生じています。
芸能関係者や劇場の最前列で取材を続ける演劇記者は、「舞台上の彼女を生で観れば、劣化などという言葉が完全な的外れであることは一瞬で理解できる」と口を揃えます。過剰なファンデーションに頼らないすっぴんの美肌を彷彿とさせる透明感と、指先まで神経が行き届いた立ち居振る舞いは、不自然に張り詰めた若作りとは次元の異なる生命力を放っています。