ポール・マッカートニーが紡いだ詩は、平易な英語でありながら、聖書の一節を思わせる荘厳な深みを持っています。代表的なコーダとスタンザの歌詞和訳を通じて、その深層心理を紐解いてみましょう。
【原詩と精緻な和訳】
When I find myself in times of trouble, Mother Mary comes to me
(僕がトラブルの渦中で途方に暮れているとき、母メアリーがやってきて)
Speaking words of wisdom, let it be
(知恵に満ちた言葉を囁いてくれる。「あるがままに、委ねなさい」と)
And in my hour of darkness, she is standing right in front of me
(暗闇に閉ざされた孤独な時間、彼女はすぐ目の前に立ち)
Speaking words of wisdom, let it be
(叡智の言葉をくれる。「そのままにしておきなさい」と)
注目すべきは、続くスタンザに登場する"There will be an answer, let it be"という一節です。「今すぐ答えを出せ」と急き立てる現代社会において、ポールは「答えはやがて現れる」と未来時制で歌っています。苦境の渦中にある人間は、往々にして短絡的な白黒思考(All-or-Nothing)に陥りがちです。しかし、複雑に絡まり合った問題の結び目は、無理に引っ張ればさらに固く締まってしまいます。時間を味方につけ、結び目が自然と緩むのを待つこと――これこそが、母がポールに遺した「words of wisdom(知恵の言葉)」の本質でした。