地震学および気象庁の見解において、「トカラの法則」には科学的根拠が一切存在しないと断言されています。気象庁の定例記者会見や地震調査委員会の発表資料でも、「特定の局所的な地震活動が遠く離れた別の震源断層を即座に刺激するというメカニズムは確認されていない」と説明されています。
トカラ列島近海で地震が頻発する理由は、この海域特有の「地質構造(テクトニクス)」にあります。
- 沖縄トラフの拡大現象:トカラ列島周辺は、東側の琉球海溝から沈み込むフィリピン海プレートと、背弧海盆である沖縄トラフが左右に引っ張られて裂け広がる「リフティング現象」が進行しているエリアです。
- 正断層型の浅い地震:地殻が東西に引っ張られる力(張力)によって、深さ10〜20km前後のごく浅い場所で無数の細かい正断層破壊が起き、群発地震が発生します。
- 火山活動との連動:諏訪之瀬島をはじめとする火山島が連なる火山フロントに位置しており、マグマや熱水の移動に伴う微小地震も起きやすい構造です。
一方、南海トラフ巨大地震は「フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下へ沈み込む固着域(アスペリティ)の破壊」によって生じる逆断層型地震です。引っ張りによって起きるトカラの地震とは応力の向きもメカニズムも異なり、数百キロメートル以上離れた南海トラフの固着状態に直接影響を与えることは物理的に考えられません。