『鬼滅の刃』において読者に計り知れない衝撃を与えた胡蝶しのぶの死亡シーンは、原作コミックス単行本17巻の第143話「怒り」に収録されています。戦いの幕開けとなる第141話「仇(かたき)」から第143話に至るわずか3話の間に、しのぶの宿命と命の終焉が凄まじい速度と密度で描かれました。
無限城の深部で遭遇したのは、最愛の実姉・胡蝶カナエの命を奪った宿敵、上弦の弐・童磨。しのぶは自らの武器である「毒」を仕込んだ日輪刀で猛攻を仕掛け、頸を斬れないハンディキャップを音速を超える連続突き技で補おうとします。「蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 迎真(ほうがのまい たなびき)」「蜻蛉ノ舞 複眼六角(せいれいのまい ふくがんろっかく)」など、持てる最高峰の剣技を繰り出し、童磨の首や眼球を貫いて次々と新調した調合毒を注入しました。
しかし、童磨の驚異的な解毒能力はしのぶの想定を遥かに凌駕していました。童磨は注入された藤の花の毒を数秒から数十秒で分解し、進化させて適応していったのです。さらに童磨の血鬼術である冷気によって肺を内側から破壊され、しのぶは鎖骨や肺を粉砕される致命傷を負います。満身創痍の中、亡き姉・カナエの幻影に叱咤されながら立ち上がり、渾身の力で繰り出した「蜈蚣ノ舞 百足蛇腹(ごこうのまい ひゃくそくじゃばら)」で天井まで童磨を突き上げましたが、それでも鬼の絶対的な生命力を削り切ることは叶いませんでした。
力尽き、童磨の腕の中に抱きしめられる形で捕らえられたしのぶは、助けに入った継子・栗花落カナヲの目の前で、背骨を折られ、そのまま「童磨 吸収」というあまりに無慈悲な形でその肉体を奪われました。連載当時の読者が息を呑んだ、鬼殺隊の主軸である「柱」のあまりにも残酷な退場劇でした。