実弥のトレードマークでもある顔面や上半身を覆い尽くす無数の傷跡は、単なる歴戦の証にとどまりません。彼の傷には、正規の教育を受けずに鬼狩りを始めた特異な経歴と、自らの特殊な血液を活用した命懸けの戦闘スタイルが刻まれています。
母親の事件後、鬼という怪異の存在を知った実弥は、育手(そだて)による指導を受けることも、鬼を殺せる日輪刀を持つこともないまま、たった一人で鬼狩りを開始しました。怪力と機転、そして太陽の光だけを頼りに鬼を拘束して焼き殺すという無謀極まりないゲリラ戦を展開していたため、その過程で全身に無数の裂傷を負うこととなったのです。
実弥の戦いを支え、同時に傷を増やし続けた最大の要因が、彼が生まれ持った極めて希少な「稀血(まれち)」の体質です。公式設定資料集や劇中の描写によると、実弥の血は稀血の中でもさらに濃縮された特殊な成分を持っており、鬼がその匂いを嗅ぐだけで感覚を狂わせ、足元をふらつかせて泥酔状態(酩酊状態)に陥らせる劇的な効果を発揮します。
上弦の壱・黒死牟(こくしぼう)との戦いにおいても、実弥は自らの傷口を露わにして血の匂いを充満させ、何百年もの鍛錬を積んだ最強の鬼の空間認識や反応速度を一時的に鈍らせることに成功しました。敵を確実に仕留めるため、敢えて自らを傷つけ血を流すという肉を切らせて骨を断つ戦術こそが、彼の全身に刻まれた凄惨な傷の真相です。