数ある地方の温泉施設の中で、なぜ高松市の仏生山温泉がこれほどまでに熱烈な支持を集め続けているのか。その最大の理由は、「建築デザインの卓越性」と「圧倒的な泉質の良さ」が奇跡的なバランスで調和している点にあります。
設計を手掛けたのは、建築家であり同館のオーナーでもある宮武英次氏。2005年の開業以来、無駄な装飾を削ぎ落としたプレーンな木造平屋建ての構造は、グッドデザイン賞を受賞するなど各方面で絶賛されてきました。館内に入ると、中庭の緑を望む全面ガラス張りの廊下が伸び、自然光が柔らかく差し込みます。いわゆる「スーパー銭湯特有の生活感」や派手な商業広告が徹底して排除されており、現代アートギャラリーや上質なブックカフェに足を踏み入れたかのような静謐な空気が漂っています。
そして、建築美以上に温泉愛好家を唸らせているのが、正式名称「仏生山温泉 天親の湯」が誇るお湯の実力です。地下約1,000メートルから毎分300リットル以上湧出する湯は、療養泉分類において「ナトリウムー炭酸水素塩・塩化物泉」に位置づけられます。炭酸水素塩泉、いわゆる重曹泉は、皮膚の古い角質や余分な皮脂を優しく乳化して洗い流す清浄作用を持ち、古くから「美肌の湯」として名高い泉質です。
特筆すべきは、源泉温度が約32〜33℃という絶妙な「ぬる湯」である点です。浴槽には、加温した心地よい温湯だけでなく、加温・加水を一切行わない「低温源泉風呂」が備えられています。肌に触れると細かな炭酸の気泡がびっしりと付着し、清涼感とともにじわじわと体の芯がほぐれていく感覚を味わえます。40℃前後の主浴槽と33℃の源泉風呂を交互に行き来する「温冷交互浴」は、自律神経を整える効果が極めて高く、全国からサウナーや湯巡り派がわざわざ足を運ぶ決定打となっています。