NHK大河ドラマにおける明智光秀の足跡は、1965年の第3作『太閤記』における佐藤慶の怪演から始まりました。初期の描写は、豊臣秀吉のサクセスストーリーを際立たせるための「陰湿で冷酷な敵役」というステレオタイプが主流でした。しかし、その潮目を大きく変えたのが1973年の『国盗り物語』です。
司馬遼太郎の原作をもとに近藤正臣が演じた光秀は、深い教養と高い誇りを持ちながらも、苛烈な時代の波と信長の急進性に翻弄される悲劇のインテリとして描かれました。知性ゆえに孤立し、自らの美学に殉じる近藤正臣の繊細な演技は視聴者に強烈なインパクトを与え、光秀を単なる悪役から「共感すべき苦悩の忠臣」へと昇華させる決定打となったのです。
その後も、1996年『秀吉』の村上弘明、2006年『功名が辻』の坂東三津五郎、2023年『どうする家康』の酒向芳など、作品ごとの演出意図に応じて多様な光秀像が提示されてきました。歴代作品における光秀の描かれ方の差異を整理すると、戦国史観の変遷が如実に浮かび上がります。